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生き生きとした職場を築くための鍵/組織開発のアプローチ

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

現在、全国の医療機関を訪問する中で感じることは、現場職員の意欲が減退し、離職者が止まらず、リーダー人材が育たなくなっていることです。

働き方改革の進展や多様な価値観を持つ職員が増え、マネジメントが難しくなった中で、感染症が続くことで医療現場は疲弊しています。さらに、リーダー不足のため、職員の動機づけも不十分です。このままでは、医療を支える担い手が減少し、スタッフの疲弊が悪化する悪循環に陥りかねません。この状況を打破するためには、どのようにすれば良いのでしょうか?

人材が高い意欲を持って生産的に働くための要件

まず、人が能動的に働くためには、いくつかの要件を満たすことが必要です。それぞれの要件が次のようなものです。

(1) 魅力的な仕事内容
自身の専門性を磨けるか、部署の配属が希望に合うか、教育の充実度などが鍵です。
(2) 魅力的な組織の環境
組織は人材に対する期待や評価を具体的に示す仕組みを整える必要があります。評価制度、目標管理、処遇制度などが該当します。
(3) 魅力的な上司
専門性と人格力を併せもつ優れたリーダーは、部署やスタッフを前向きな方向に導きます。
(4) 良好な人間関係
チームメンバーが協力し合い、助け合う環境はスタッフのモチベーション向上に寄与します。
(5) 組織の人材に対するビジョンや方針
上記4つの要件の基盤であり、ここが土台となって他の要件が構築されます。

5つの要件はどれが欠けてもいけない

人材の意欲を高め、生産的に働いてもらうには、これら5つの要件を全て満たす必要があります。しかし、経営者が注目しがちなのは組織の環境や人間関係です。一方で、魅力的な上司を育てることは多くの病院で軽視されています。特に、人格力の育成に向き合っている病院は限られています。
なぜリーダーの人格力育成は重要であるにも関わらず、多くの医療機関では十分に取り組まれていないのでしょうか?それは、人格力を向上させることが非常に難しく、どのように進めるべきかがわからないという理由が挙げられます。しかし、この分野には確立された答えがないわけではありません。

人格力(リーダーシップ)を育む方法は

人格力についての研究は、成人発達理論という分野で進化し続けています。多くの学派が存在し、各研究は非常に深いものですが、共通して言えることは、人間の視座や意識は段階的に発展し、訓練を積むことで進化するということです。
この訓練において、重要なのは「内省」です。自身の認識や行動を客観的に評価し、新たな視点や可能性を模索するプロセスは、人格力(リーダーシップ)の向上に寄与します。組織はこのプロセスを促進する場を提供すべきです。自身と部署の課題に向き合い、内省を通じて己を見つめ直すことで、リーダーは成長し、部署、組織、スタッフに新たなアプローチをもたらすことができます。

管理職の人格力を高める「場」を創造する

組織の環境や人間関係の整備だけでは、持続的なモチベーションや生産性の向上は難しい場合があります。そのため、病院は、管理職の人格力の向上を支援する機会を創り出すことが必要です。人格力を向上させた管理職は、部署全体を前向きな方向に導き、組織の成功に貢献します。
多くの病院では、与えられた役割や責任を果たすことに重点を置いていますが、人格力を形成するには、「内省」による自発的な気づきを促すアウトプット型研修が必要です。これは、インプット型研修と併用することで、効果的なリーダーシップの発展が可能です。
インプット型とアウトプット型の研修を組み合わせ、管理職の人格力を高め、生き生きとした職場を築くための環境を提供することが、将来の人材を育てる鍵となります。是非、この方向に進むことを検討してみてください。

病院幹部のための組織開発講座第12弾
人口減少時代に備えた病院の組織づくり

組織開発というアプローチ

本稿の執筆者

江畑直樹(えばた なおき)
株式会社ミライバ 取締役

2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事。2018年に株式会社ミライバを設立し、組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。成人発達理論、学習する組織、U理論、インテグラル理論、NVC等の理論をベースとし、首都大学東京専門職大学院や日本社会事業大学専門職大学院では、これら理論を軸とした組織創りやサービス開発等について看護管理者、福祉管理者を対象に授業を行う。

株式会社ミライバ/株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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